2025年6月1日

コリント人への手紙第二　5章16〜21節

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜ 新しくされたものの努め ＞


コリントの教会について
　コリントの街は、商業の街として栄え、多くの人々が行き交う港町でした。このような貿易や商業の盛んな街では、特に性的不品行が蔓延していました。コリントという地で、あまりにも不品行が横行していたので、コリント風に生きる、コリント風になるという言葉があり、それは「性的不品行を行う生き方」という意味で使われていたほどです。そのような街でパウロは開拓した新しい教会の中にも、過去に不品行を行っていた宗教を信じていた異邦人のクリスチャンたちが昔の習慣や慣習から抜け出せず、むしろその悪習慣を教会に持ち込んでいるようでした。コリントの教会へ手紙（第一コリント人への手紙）を書き、その後状況が少し良くなったものの、未だ、偽教師たちやパウロを非難する人々がいました。パウロが語った福音が、その偽教師たちが説くたくさんある教えのうちの一つとなり、価値が下がっていきました。偽教師たちは、パウロは手紙はよこすけれども、全然コリントに来ないじゃないか、とパウロを攻撃し非難しました。パウロは、未だ混乱の中にあるコリントの教会を気にかけ、もう一度手紙を送りました。

５章１６節
　ですから、私たちは今後、肉にしたがって人を知ろうとはしません。かつては肉にしたがってキリストを知っていたとしても、今はもうそのような知り方はしません。

　「肉にしたがって人を知る。肉に従ってキリストを知る」とあります。「肉にしたがって」とはどういう意味でしょうか？この世の価値観や、うわべで人を判断する、ということです。私たちはイエス様を信じるとき、そして信じた今は、知識だけでイエス様を知る知り方ではなく、イエス様を、個人的に・人格的に知るようになります。神様の目線に立って人を判断し、生涯をかけてイエス様を個人的に深く知っていくことが私たちクリスチャンの在り方です。

　パウロは、まさに、肉に従って人を知り、キリストを知っていた一人でした。イエスキリストについて、少しも知らず、知ろうともせず、ユダヤ教の立場から判断し、迫害し、イエスキリストを信じる人々を殺してきました。しかし、イエス様と劇的に出会い、心改め、教会を建てあげるにまで成長します。コリントの教会の中で、パウロの言葉を否定する偽教師たちは、このパウロの肉にしたがって歩んできた出来事や、パウロの弱さを責めたのではないかと思います。ここで、パウロは、はっきりと、イエス様を信じ歩む私たちはもう、人間的な価値観や標準によって人を判断したり、イエスキリストを知るのではないと宣言します。

　過去の罪や、痛みを引き合いに出されると私たちはどうしても弱気になってしまいます。私はどうせこんなやつだ、私にはそんな価値がない、と思ってしまいます。パウロの場合は、信仰者を追いかけ回し、迫害し、殺し、いくら謝っても赦されないようなことをしてきました。パウロはその自分の過去にどう向き合いながら生きていったのでしょうか。いつまでもそのことを責めて、私にはイエス様を信じる資格がありません、イエス様を伝える資格はありませんと、何もしない人生だったのでしょうか？　みなさんは、どうでしょうか。これをしたいと挑戦するとき、何かを任される時、私にはそれをやる資格がありません、そんな価値がありません、と生きているでしょうか？

　私の価値は、過去の罪や失敗や過ち、他人からの評価で決まりません。他人からどう思われても、自分自身を評価しても、私の価値は絶対に変わらないままです。 イエスキリストのうちにあるなら、神様の子どもという新しいアイデンティティを持って生きることができるのです。そして、そのようなアイデンティティを持った人々の集まりが教会で、互いに励まし合いながら成長していくのです。

５節１７節
　ですから、「だれでもキリストのうちにあるなら、その人は新しく造られた者です。古いものは過ぎ去って、見よ、すべてが新しくなりました。」

　イエスキリストのうちにある、イエスキリストが唯一の主だと信じている私たちは、新しく造られたものです。神様は、もう、その過去を見ないと、その過去や失敗で私の評価を決めるのではない、と言ってくださるのです。私たちは、神様が見る目で、神様が思う心で物事を判断する新しく造られたものとなったのです。神様がそう言ったらそうなのです。

　今日、みなさんの過去の出来事や失敗で自分の価値を決める考え方から解放されて欲しいと願います。イエスキリストを信じるなら、イエスキリストのうちを歩むなら、私たちは新しくされたものです。古い慣習・習慣・考え方・過去の出来事で物事考え、自分を判断し、他人を裁く生き方から、神様の目と心で自分を見る生き方へ変えられて欲しいと願います。そして、新しく造られたものになろうと、自分の力で心を変えようと頑張るのではなく、この新しいものへと変えられるようにその預言を成就してくださった、イエスキリストが私の心を取り扱ってくださるように祈りましょう。

　５章１８〜２０節を読むと、和解という言葉が、何度も登場してきます。「和解する」ということはどういう意味でしょうか？　一般的に考えると、元々仲が良かったけれど、喧嘩して、関係が悪くなり、お互いが謝って仲直りする、というのが私たちの考える和解だと思います。しかし、この和解するという単語は、「交換」、という意味合いも含まれているようです。パウロが考える和解は、元々あった良い関係が徐々に回復していく、仲直りするというものではなく、全く別のものに取って代わるという意味です。関係が良くなる、と言うよりも関係が変容する、新しくされる、それが和解です。

　また、この和解は、神様が歩み寄ってくださったことにより始まります。私たちと神様との関係は、以前は敵対関係にありました。この関係の中で、非があるのが人間である私たちであり、神様はある意味被害者です。この関係を和解させるなら、神様に向かって反抗し、敵対している私たちが、「ごめんなさい」と言わなければなりません。しかし、神様の方から歩み寄ってくださり、この和解を与えてくださいました。

　聖書でいう和解は、全く非のない神様の方が歩み寄り、さらに何の罪もない大事な子どもであるイエスキリストを通して、私たちのために人間と神の関係を新たなものにしてくださったということです。「和解」のギリシャ語を見ても、和解のアクションをする動詞の主語は必ず神様です、ということは、和解するアクションを起こされるのは何も罪のない非がない神様の方です。罪の全くないイエス様が十字架で私たちの罪を全て負ったので、和解が成立したのです。しかし、和解というのは、ただ一方が完成して成立するものではなく、お互いが合意しなくてはなりません。神様はすでにイエスキリストを通して、和解をして下さったので、私たちは、自分の非を認め、その和解に応答するのです。

１８・１９節にあるように、神に和解された私たちは、“和解の務めを与えられました。和解のことばを委ねられました。何よりもまず、神様と和解する、これが私たちが与えられている務めです。そして、私たちは、その神様と和解した関係を、いくところどころに持っていくようにとパウロは言っています。それを表現しているのが、20節の私たちはキリストに代る使節なのです、という言葉です。英語にすると、アンバサダーです。ファッションブランドが芸能人をアンバサダーとして、起用します。その、アンバサダーの仕事は、商品を身につけ、ブランドをより多くの人に知ってもらいます。また、この商品は、信頼・信用できる良いものだということを伝えます。

　新しくされ、和解された私たちの役割は、アンバサダーです。教会の中でも、会社の中でも、家庭の中でも、私たちはイエス様との関係、和解にある関係を身につけていくのです。世の中や周りに影響されて神様との関係が揺らぐのではなく、私たちと神様の関係を通して、イエス様って信頼できる・信用できる良いものなんだと、周りに影響を与えていくことになります。それは、頑張って周りにイエス様を伝えようとすることではありません。わたしたちの務めは、神様が歩み寄ってくださりイエス様によって、和解の関係の中にある、ということを生き続けることです。

　みなさんは、もうすでに神様との和解を受け入れていますか？また、その務めを果たしていますか？　私たちは弱い人間ですから、このコリントの教会の中の問題のように、この世の価値観や自分の欲によって簡単に、神様から和解させてもらっていることを忘れます。その和解がイエスキリストの尊い血によってなされたということを忘れてしまいます。

　私と神様の関係がまず、新たにされているか、和解されているか心に聞いてみましょう。神様との関係の中で、何か妨げになっているものはないでしょうか。神様と和解したいけれど、受け入れられない何かはありますか？　また、和解を受け入れた今、自分と神様との関係を、職場に、学校に、家庭の中に身につけているアンバサダーとして生きられるように祈りましょう。自分が影響されるのではなく、自分が周りにイエス様の香を放つ、良い影響を与えるアンバサダーとして用いられるよう祈りましょう。



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