2023年4月9日

ヨハネの福音書　20章24〜29節

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜ 信仰の二つの顔 ＞


　福音書にはイエス様の復活を証言する人たちが多く登場します。その中で、ヨハネの福音書にはマグダラのマリアと弟子であるトマスが証人です。今日はトマスの証言を中心に見てみたいと思います。

　イエス様の弟子たちの中で、トマスには独特な面があります。それは双子であることです。
１１：１６「デドモと呼ばれるトマス」
「デドモ」の意味は双子です。双子であることがそんなに特別なことではないので、他の福音書は双子だと紹介していませんが、ヨハネは特別な意味を込めて双子だと紹介しています。他の福音書にはトマスが双子であると言っていなのに、どうして、ヨハネはわざと「デドモと呼ばれるトマス」と紹介しているのでしょうか？　私たちはヨハネのその意図を探りたいです。

　「双子と呼ばれるトマス」にはヨハネが言いたかった伏線があると前提します。双子は非常に似ています。特に一卵性双子はそっくりです。長く一緒に過ごした人ではないと見わけが出来ません。一卵性双子の顔はそっくりですが、性格もそっくりでしょうか？　いくら一卵性双子でも別々の人格なので、性格は違います。もしかして、性格が全く正反対であるなら、ドラマの素材になるでしょう。

　双子であるトマス兄弟の一人がイエス様の弟子となりました。双子のもう一人は一般人の生活をしたでしょう。使徒ヨハネが福音書でわざと双子の意味である「デドモと呼ばれるトマス」と書き入れた理由は双子の話をするためではありません。イエス様の弟子であるトマスの二つの内面を見せるためではないかと推論します。トマスの中に信仰の二つの顔があります。主に対する熱い信仰の顔があります。もう一つはよっぽどの確証がない限り、絶対信じようとしない不信仰の顔があります。わずか1、2週間の間にこれらの正反対の側面が同時に現れたらどうなりますか？　ヨハネの福音書の中で全然違うトマスがいます。


１．主への熱い信仰のトマス
　ヨハネの福音書１１章に登場するラザロはイエス様と親しい関係でした。イエス様はラザロの妹たちのマルタとマリアとも親しい関係でした。イエス様は弟子たちにラザロの死を眠りに例えて伝えました。ラザロが眠っているとイエス様が言われたので、弟子たちは文字通りラザロが眠っていると認識しました。弟子たちがラザロの死を文字通り、眠りだと認識していたので、イエス様はラザロが死んだことをはっきり伝えました。イエス様が弟子たちに「さあ、彼のところへ行きましょう」と言われたら、トマスが反応しました。
１６「私たちも行って、主と一緒に死のうではないか。」
イエス様は弟子たちに死んでいるラザロのところに行きましょうと言っただけです。ラザロのように死にましょうと言っていません。それなのに、トマスはどうしてここまでオーバーしているのでしょうか？

　彼は死ぬことの恐怖をあまり重く感じていないでしょうか？　トマスは興奮しているのでしょうか？　ヨハネ9章で生まれつきの盲人の目をイエス様が明けたので、興奮したのか。トマスは言葉通りに、殉教を覚悟しているのでしょうか？　8節を見るとユダヤ人たちがイエス様を石打しようとしていたので、彼もイエス様と一緒に殉教を覚悟しているようにも見えます。或いは当時、弟子たちは１２人の中で誰が一番イエス様に忠実なのか、権力争いがありましたので、イエス様に気に入って頂こうとしたかも知れません。トマスは信仰の熱い人だと思います。死を持ってイエス様に従おうとする熱心さも感じられます。

　トマスだけではなく、ペテロも負けないくらいの熱心さ、熱さ、忠誠心がありました。
１３：３７「ペテロはイエスに言った。「主よ、なぜ今ついて行けないのですか。あなたのためなら、いのちも捨てます。」
ペテロの覚悟に偽りは感じられません。ヤコブも、ヨハネも主のためなら、何でも出来ると言いました。トマスも、ペテロも、ヤコブも、皆イエス様のために熱い信仰と忠誠心を持っているように見えます。


２．主の復活を信じないトマス
　熱い信仰のトマスにもう一つの面がありました。なかなか信じない不信仰の顔でした。「私たちも行って、主と一緒に死のうではないか」と言ってから２週間も経てないのに、イエス様の復活を信じようとしません。他の１０人の弟子が復活のイエス様にあって喜んでいたのに、彼だけは否定しました。

２５・・しかし、トマスは彼らに「私は、その手に釘の跡を見て、釘の跡に指を入れ、その脇腹に手を入れてみなければ、決して信じません」
「決して信じません」
彼は見えるものだけ信じます。彼は触れるものだけ信じます。

　双子トマスに信仰の二つの顔があります。一卵性双子は見た目がそっくりのように見えますが、中身は全然違うことと同じく、彼の信仰にも二つの側面がありました。普段は良い信仰者のように見えましたが、いざと言う時に本来の姿が見えました。

　他の弟子たちも皆、同じでした。今までは熱心にイエス様に従って来ました。しかし、十字架の瞬間、皆逃げました。ヨハネ以外は皆、離れました。


３．トマスの信仰は何か。
　トマスは熱い信仰から不信仰に突然変わりました。熱い信仰から不信仰に変わりました。いや、もしかすると彼は元々不信仰だったかも知れません。３年間を振り替えてみると彼がイエス様に従った目的は出世することでした。十字架はトマスの目標ではありません。十字架が目標ではないので、イエス様の復活にも反応を現しません。


４．私たちの信仰には二つの顔がないか。
　信仰の二つの顔は弟子たちだけの事でしょうか？　残念ながら私たちにもある姿です。熱い信仰の日もあれば、不信仰の日もあります。


５．主がくださる真の信仰告白
　トマスの二つの顔、弟子たちの信仰の二つの側面、私たちの二重のように見える信仰
私たちの信仰は大丈夫でしょうか？

　私たちの信仰が駄目でも、大丈夫だと思います。イエス様の復活があるからです。イエス様が駄目な私たちの信仰を治してくださいます。イエス様が駄目なトマスの信仰を治してくださいました。

２７ それから、トマスに言われた。「あなたの指をここに当てて、わたしの手を見なさい。手を伸ばして、わたしの脇腹に入れなさい。信じない者ではなく、信じる者になりなさい。」
２８ トマスはイエスに答えた。「私の主、私の神よ。」
主が彼の信仰を治してくださいました。新しい信仰によって生まれ変わったトマスは一番素晴らしい信仰告白をしました。
「私の主、私の神よ。」

　主が私の信仰も治してくださいます。現在の信仰の姿がどうであれ、安心して主について行きましょう。復活の主が完全にしてくださいます。イエス様の復活が私たちの復活であり、イエス様の勝利が私たちの勝利です。現在は私たちが十字架を背負って歩んでいるところです。ですから、不安定もあり、不信仰もあり、二重の信仰もあります。しかし、復活の時はイエス様と同じく完全な者となります。



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