2023年4月2日

ヨハネの福音書　19章13〜22節

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜ 私の真の王 ＞


　今日から受難週となります。受難週はイエス様の十字架と葬りの一週間のことです。イエス様は私たちの罪の代わりに十字架を背負われました。それでは2000年前、当時の人たちの具体的な罪は何だったでしょうか？　そして、私たちの現在の罪は何でしょうか？　2000年前の人たちと私たちの罪は何が同じでしょうか？

　さて、ヨハネの福音書１９章に何回も書いてあるから、目立つ言葉があります。イエス様がユダヤ人の王様であることです。今日の箇所で一番多い単語が王です。

３ 「ユダヤ人の王様、万歳」
１５・・・ピラトは言った。「おまえたちの王を私が十字架につけるのか。」
　　　　祭司長たちは答えた。「カエサルのほかには、私たちに王はありません。」
１９・・・それには「ユダヤ人の王、ナザレ人イエス」と書かれていた。
２１・・・「ユダヤ人の王と書かないで、この者はユダヤ人の王と自称したと書いてください」

王様をイメージする単語もあります。
２ 兵士たちは、茨で冠を編んでイエスの頭にかぶらせ、紫色の衣を着せた。
５ イエスは、茨の冠と紫色の衣を着けて、出て来られた。

　イエス様の裁判で弟子ヨハネが強調したかったことはイスラエルの真の王様であるイエス様です。それでは弟子ヨハネが強調したかったことと王様という単語と何の関係があるのでしょうか？


１．ユダヤ人の王
（１）ピラトにとってユダヤ人の王は
　ピラトが一番嫌がることはユダヤの地域で反逆が起こることです。当時はローマがユダヤを支配していましたが、ユダヤの地域には今まで多くの反逆がありました。歴代の総督たちはユダヤ人の反逆で手を焼いていました。ユダヤの地域で反逆が起こると総督の責任です。ユダヤの地域から反逆が起こらないように歴代の総督たちはいろいろの政策を立てました。イスラエル民を脅かすために厳しい政策をとるか、反対にイスラエル民を宥めるために柔和な政策をとるか。ピラトもいろいろの政策で治めていました。その中の一つが過ぎ越しのまつりに一人の囚人を解放することをやっていました。大勢の群衆が集まる過ぎ越しのまつりに合わせて、群衆の願いを聞き入れ、一人の囚人を解放することで、反乱が起こらないように群衆を宥めました。

　ピラトにとって一番神経質になる単語がユダヤ人の王です。それなのに、ピラト自身が何回も続けてイエスがユダヤ人の王だと言っています。
１５ 「おまえたちの王を私が十字架につけるのか」
２２ 「私が書いたものは、書いたままにしておけ。」

　ピラトはユダヤ人の王と言う単語を一番嫌っているのに、イエスこそ、ユダヤ人の王だと何回も言っている理由があります。大祭司たちがイエス様を十字架で殺したい理由を知っているからです。そして、狡猾な大祭司たちに操られて、宗教指導者たちの言いなりになりたくないからです。
「あなた方の王様であるイエスをローマ総督である私が殺して良いのか。」
「あなた方にはユダヤ人としてのプライドもないのか。」

　ピラトがイエス様を本当にユダヤ人の王だと認めているのではありません。大祭司やユダヤ人を皮肉っているだけです。ローマ兵士がいばらの冠、紫服を着せらせたこともいたずらです。大祭司に「イエスがユダヤの王ではないか」と言っている理由も大祭司たちを挑発するためです。

　イエス様は一般民衆に人気があって、王様のような人気でした。しかし、大祭司たちは民から軽蔑されていました。政治的な権力を独占して、神殿の経済的な利権ばかり求めている邪悪な大祭司です。それを知っているピラトがあざ笑うために「ユダヤ人の王、イエス」と言っています。

（２）大祭司たちにとってユダヤ人の王様は
　弟子ヨハネは当時の人たちの最大の罪を指摘するためにイエス様の裁判の場面を独特に構成しました。ユダヤ人の本当の王様は誰なのかを追求するのがヨハネの目的です。ピラトと大祭司がユダヤ人の王様に関して議論はしていますが、接点がないはずです。ピラトからすればユダヤ人の王様は人間の王です。しかし、大祭司からすれば元々、天の神様が真のユダヤ人の王様になるはずです。大祭司が正常な神の僕であるなら、ユダヤ人の王は天の神だと主張するはずです。

　ユダヤ人の真の王様は天の神さまです。旧約から一貫している思想が天の神こそ、イスラエルの唯一の王であり、真の王です。サムエル記、列王記、歴代誌の一番の主な思想が天の神こそ、唯一の王様です。天の神さまの主権を認めるダビデとダビデの道を歩んだ王たちは良い王と書かれます。天の神さまの主権を認めないで、ダビデの道を歩まなかった王は悪い王と書かれました。歴代の王は天の神に代わって代理に王権をにぎっている主の僕に過ぎません。

ヨハネの１９章には大祭司の最大の罪が何かが書いてあります。真の王であるイエス様を拒んだことです。
１５ 「カエサルのほかには、私たちに王はありません。」
ユダヤ人の真の王様である神を捨てて、カエサルを王だと宣言しました。これが一番の罪であり、一番根本的な罪です。神との関係を否定するのが一番の罪です。倫理的な堕落は二の次、三の次です。真の王である神さまから離れたのが第一の罪です。真の王様である神さまから離れたので、恐ろしいものがありません。恐れるものが何もないので、王権を乱発します。王権をやりたい放題で乱発すると自然に堕落します。堕落するとありとあらゆる悪事を行います。


２．私たちの罪も同じもの
　ヨハネ１章１１節「この方はご自分のところに来られたのに、ご自分の民はこの方を受け入れなかった」
ご自分の民が真の王を心に受け入れないのに、真の王であるイエス様はその民の罪の代わりに十字架を背負い、その民に永遠のいのちをくださることがヨハネの主な主題です。

　イエス様を私の唯一の王様であることを認めないのが一番の罪です。イエス様が私の唯一の王様であることを認める人はすべてのことにおいて慎みますが、認めない人は全部自分勝手に決めて、勝手に行動します。

　CCCが福音を説明する時、用いる絵があります。自分自身が心の王座に座っています。今まで自分自身が王様でしたので、自分勝手に決めて、自分勝手に生活しました。しかし、これからはイエス様を王様として心に迎え入れます。そして、イエス様が私の心の王座に座っておられます。イエス様を信じた後からはイエス様がお決めになります。イエス様を信じる意味は私の心の王座をイエス様に返すことです。そして、真の王様であるイエス様に従うことが信じる意味です。

　私たちは現在もこれを認めていますか？　イエス様こそ、私の真の王様であると認識していますか？　ピラトはイエス様に「私にはあなたを釈放する権威があり、十字架につける権威もあることを、知らないのか」とイエス様に言いました。ピラトが何も知らず言ったことです。イエス様こそ、十字架にかかる権威があり、十字架を背負わない権威もある。

　イエス様こそ、私たちの運命、未来に関して救われる権威があり、見捨てられる権威がありますが、私たちは知っていますか？　認めていますか？　イエス様は私の真の王様でしょうか？　これが信仰の大前提であり、信仰のスタート時点です。

イエス様は私の真の王様
これが一番の罪となる分岐点です。倫理的に深刻な罪があったとしても、この罪には全然及びません。イエス様と一番根本的な部分に関する問題です。



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