2023年3月19日
レビ記 25章8〜22節
＜ ヨベルの年と土地 ＞
世界的な経済不況になると破綻する企業、破綻する個人が増えます。信用不良になるケースがいろいろあります。信用不良になるケースはいろいろですが、目的が健全でも、純粋でも破綻するケースがあります。私たちの人生、長いと言えば長いですが、自分の限度を超えるお金を使わざるを得ないことがあります。うまく乗り越えれば良いですが、乗り越えられなかったら、その日から未来は回復出来なくなります。
現代社会で一度金融の信用を失ったら、回復することはほぼ不可能です。金銭トラブルは家族も、親戚も、友達も、皆の関係を壊します。金銭の問題が生じた人はその後、どうすれば良いでしょうか？ 一度だけの過ちで、一度だけのトラブルで、残りの人生が駄目になって良いでしょうか？ 資本主義社会はお金が神なので、信用不良は死亡宣告と同じです。社会はそれらの人たちを諦めます。
しかし、信用不良者が増えると社会も危なくなります。各国はこれらの問題の深刻さを知っていますので、何かの解決方法を考えます。単なる個人の問題にしてしまうと国全体が危なくなります。それでは聖書の神さまはいかなる解決方法を持っておられるのでしょうか？ その理由で、出てきたのがヨベルの年です。
１．ヨベルの年は何か。
安息の年を七回、すなわち、七年の七回、四十九年の後、五十年目を聖別しますが、その年をヨベルの年と呼びます。ヨベル年は５０年に一回です。50年目になるとその第七の十日に角笛を鳴り響かせます。全土に鳴り響く角笛の音は国中のすべての住民に解放されましたという宣言です。ヨベルの年になるとユダヤ人であるしもべたちや奴隷たちはそれぞれ自分の所有地に帰り、それぞれ自分の家族のもとに帰ることができます。しもべの身分から、一般市民に身分が回復する日です。身分を元通り、もう一度リセットする日です。
回復するのは身分だけではなく、土地も戻ってきます。自分の所有地に帰りなさいだから、以前売ってしまった土地が再び戻って来る制度です。土地を売買するとき、ヨベルの年を計算します。ヨベルの年になると再び土地が帰って来ますが、その期間が長ければ収穫できる年が長いので、高値が付きます。反対にヨベル年が近い時は土地の値段は安くなります。ヨベルの年まで収穫できる年数が少ないからです。
これらのことを総合するとイスラエル民にとって土地の売買は50年限りです。土地の売買契約は５０年限りの契約です。身分も一時的にしもべになることはあるかもしれませんが、５０年目になると誰でも元の一般市民に身分が回復します。
ヨベルの年も安息年と同じく、種を蒔いてはならないし、落ち穂から生えたものを刈り入れてもならないし、手入れをしなかったぶどうの木の実を集めてはなりません。そうなると49年目の安息年は仕事してはいけない、50年目のヨベルの年も仕事をしてはいけない。どうやって生活しますか？ 神さまが48年目の時、前もって3年分を与えてくださると約束しました。結論から申し上げると安息年も守れなかったイスラエル民がヨベルの年を守るはずがありません。ヨベルの年は一度も守られたことがありません。ですから、現代の私たちにはなおさらのことです。
２．ヨベルの年の理由、価値
神さまがイスラエル民全体にここまで要求しておられる理由は神さまが彼らをエジプトから救い出して、カナン地の本当の地主として彼らにただで下さったからです。神さまがエジプトの奴隷であったイスラエル民をわざわざ救い出して、自由の身分にしたのに、せっかく救い出された人たちが色々の理由で再び奴隷になったことを神さまは認めません。神さまがせっかく自由の民にしたのに、ずっとしもべのままにしてはいけないことです。
土地も同じ概念です。カナン地は神さまが本当の地主で、愛するイスラエル民に配分したものです。やむを得ない理由で土地を売る契約をしましたが、それはあくまでも仮契約です。神さまが本当の地主です。神さまがイスラエル民にしばらく土地を貸しています。それを永遠に売ったり、買ったりしてはいけません。土地の契約は仮契約に過ぎません。一旦、50年目になると皆、元通りの土地に帰ります。神さまがせっかく土地を分配したのに、地境を移してはいけません。
神さまがヨベルの年を通してイスラエル民に教えたいのは安息年の内容と似ています。土地は神さまのものであって、個人の所有ではないことです。イスラエル全体を養わるのは天の神さまであって、各個人ではないことです。50年間、各家庭に色々のことがあります。50年は一人の人生と言っても過言ではありません。50年単位で、もう一度新しい人生、今までの失敗を再び回復させる制度です。運が悪かった人にも、事業を失敗した人も、罪を犯して人生どん底に落ちた人にも、もう一度チャンスをくださることです。罪の罰は50年で充分、人生の不幸も５０年以上は続かない、永遠の土地売買を禁止して一人が富を独占して、社会が壊れることが無いようにしました。
ヨベルの年がないと土地を持っている人は神の祝福を独占してしまいます。貧しい人はいつまで時間が経っても、貧しいまま希望もありません。これらの人たちが増えると社会は元気を失い、維持できなくなります。ヨベルの年はお金持ちに不公平な制度ではありません。彼らにも平等に被害が無いように土地売買において、お金持ちの権利を記しています。
ヨベルの年は皆が共に生きるために、社会が安全に守られるように神さまくださいました安全装置です。残念ながら、安息年みたいに一度も守られたことがありません。人の欲望はきりがなくて、運よく一度手に入れた土地を手放すことはしません。人の欲望は制限もなくて、隣の人たちの土地を次から次へと買収します。隣人の不幸を私の幸運にする生き方をすれば、神さまが引き続き、助けて下さるのでしょうか？ 未来まで幸せが続くのでしょうか？ 社会は健全に維持されるのでしょうか？
安息年もそうだし、ヨベルの年もそうだし、今まで神さまに祝福された人がちょっとだけ隣人を顧みられることをすれば皆が生きることとなります。神さまはそれを求めています。
３．現代の私たちに求められるヨベルの精神
現代の私たちは安息年も守ることができませんが、ヨベルの年も守れません。土地の売買契約が５０年でもう一度リセットされることはありません。一度失った身分を回復することもありません。自己破産したらずっと続きます。技術の発達で、私たちの過ちの経歴は忘れられることなく、生涯ずっと残って足を引っ張ります。私たちの過去の罪を、過ちを、失敗を、恥を全部一度リセットして、忘れてほしいです。神さまは私たちの罪を全部赦してくださるのに、人間たちは忘れてくれません。
神さまが私たちを赦して下さり、もう一度チャンスをくださいましたので、私たちも立ち直って、今度は他の人達を助けられる働きが出来たら良いですね。誰かが立ち直れるようにもう一度チャンスをあげる、助けの手を差し伸べる、回復できるチャンスを与えられる人になりたいです。
社会は「一人の失敗は本人の責任だ」と言います。社会の価値観は非常に厳しいです。本人の不注意で失敗したのに、助けてしまうと悪い癖になるから駄目だ。お金の管理が甘いので、いくら助けてもまた、同じ結果になるので、助ける必要がない。助けるとまた、国が、社会が助けてくれるだろうと勘違いしてはいけない。これらの冷静な意見は全部正しいです。
個人はそう言っても良いです。家族もそう言ってもそう言っても良いです。しかし、国は同じく言ってはいけません。個人の責任だからと言ってほっておくと社会そのものが全部被害者になります。神さまが命じられたヨベルの年はイスラエル社会全体が駄目にならないようにするための措置です。私たちはあわれみ深い神さまに習って、私たちもあわれみ深い人になりたいです。人々をあわれむ人が神のあわれみを続けて頂きます。
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