2023年2月19日

創世記　19章15〜26節

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜ ロトと財産 ＞


　財産が増えることは神さまの祝福だから良いことですが、財産が増えることが全部良いことかと言うとそうではないこともあります。ロトの人生を見ると財産が増えたことから、人生の下り坂が始まりました。


１．アブラハムと一緒に暮らしたとき
創世記１２：５
「アブラムは、妻のサライと甥のロト、また自分たちが蓄えたすべての財産と、ハランで得た人たちを伴って、カナンの地に向かって出発した。こうして彼らはカナンの地に入った。」
　アブラハムにも財産があり、ロトにも財産がありました。ロトはアブラハムのおかげで安全に財産が守られていました。ロトは長年間、アブラハムと同行しました。カルデア人のウルからハランに移る時も同行しました。ハランからカナン地に移る時も同行しました。カナンからエジプトに移る時も同行しました。エジプトからカナンに戻る時まで同行しました。ロトはアブラハムと一緒に暮らた時は財産が減ることもなく、安全に守られていました。アブラハムが持っていた兵たちのおかげで、ロトの財産は守られていたわけです。


２．多くの財産の故にアブラハムと別れる。
　エジプトからカナン地に戻ると土地は狭いのに、アブラハムの家畜とロトの家畜が多くて、親戚の間に争いが起こりました。

創世記１３：２、５−７
「２ アブラムは家畜と銀と金を非常に豊かに持っていた。
５ アブラムと一緒に来たロトも、羊の群れや牛の群れ、天幕を所有していた。
６ その地は、彼らが一緒に住むのに十分ではなかった。所有するものが多すぎて、一緒に住めなかったのである。
７ そのため、争いが、アブラムの家畜の牧者たちと、ロトの家畜の牧者たちの間に起こった。そのころ、その地にはカナン人とペリジ人が住んでいた。」

　アブラハムとロトは今まで長年間一緒に暮らしましたが、これからは一緒に暮らせなくなりました。それぞれの家族の財産が増えたので、分かれることは良いことだと思います。神さまがそれぞれの家族を祝福してくださったことだから、分かれても、神さまが引き続き祝福してくださるでしょう。アブラハムとロトはいよいよ分かれる時期が来たと思って別れることにしました。

創世記１３：８−９
「８ アブラムはロトに言った。「私とあなたの間、また私の牧者たちとあなたの牧者たちの間に、争いがないようにしよう。私たちは親類同士なのだから。
９ 全地はあなたの前にあるではないか。私から別れて行ってくれないか。あなたが左なら、私は右に行こう。あなたが右なら、私は左に行こう。」

　彼らの未来はこれからどうなるのでしょうか?　どうせ、分かれたのであるなら、神の祝福によってますます、財産が増えたら良かったですが、ロトには悪いことが起こりました。


３．一気に、全財産を失ったロト
　ロトは彼なりに財産を安全に守るために大きな都市であるソドムに行きました。彼なりにはベストを尽くして、懸命に考えたうえでの結論でした。カナン地には友人もいなく、頼りになる人もいないから、彼なりには考えて多くの人たちが集まっている集団の中に入れば安全だろうと思ってソドムに行きました。今まではアブラハムのおかげで、財産が守られました。しかし、アブラハムも一人の人間に過ぎません。ロトからすれば、一人の個人に頼るよりは多くの人たちの中に入れば自然に財産も、安全も守られると思いました。賢い選択のように見えました。しかし、生きている間、何が起こるか分からないのが私たちの人生です。ロトは全く予想していなかったことに出会いました。

１４：１２
「１２ また彼らは、アブラムの甥のロトとその財産も奪って行った。ロトはソドムに住んでいた。」
　ロトが住んでいたソドムの町が地域戦争に巻き込まれて、ソドムの住民が捕虜となり、財産も全部奪われました。今まで一生懸命働いて蓄えた財産が一気に無くなりました。あり得ないことがロトの人生に起こりました。財産を守る対策が問題ではありません。なぜ、財産を守ろうと頑張るのか。なぜ、財産を増やそうと努力するのか。その財産をどこに使うつもりなのか。財産の目的は何か、財産を蓄える理由は何か、財産ってそもそも何か。ロトはなぜ、財産が必要だったでしょうか？　異国で暮らしながら、身の安全のために、家族との幸せのために、ロト自身の老後のために財産が必要でした。私たちと同じ理由で財産が必要でした。ロトは残念ながら、彼が持っていた財産はこれらの目的を一つも満足させてくれませんでした。


４．ロトの命と家族を守ってくれなかった財産
　危機一髪から救い出したのはアブラハムでした。アブラハムはロトが危機に落ちているというお知らせを聞いて、兵を動員して、ロトの家族と財産を全部取り戻しました。アブラハムはロトの家族と財産だけではなくて、ソドムの住民と全財産も一緒に取り戻しました。

創世記１４：１４−１６
１４ アブラムは、自分の親類の者が捕虜になったことを聞き、彼の家で生まれて訓練された者三百十八人を引き連れて、ダンまで追跡した。
１５ 夜、アブラムとそのしもべたちは分かれて彼らを攻め、彼らを打ち破り、ダマスコの北にあるホバまで追跡した。
１６ そして、アブラムはすべての財産を取り戻し、親類のロトとその財産、それに女たちやほかの人々も取り戻した。

　ロトはアブラハムのおかげで命拾いしました。人生終わりになるところ、アブラハムが救ってくれました。ロトの財産がやってくれるはずのことをアブラハムがやってくれました。

「ロトとその財産」という表現が２回もあります。（１２，１６節）
　ロトの財産がロトの命を守ってくれると期待していました。ロトの家族、未来を財産が守ってくれると期待して、蓄えました。しかし、実際はアブラハムが守りました。ロトはこのようにソドム生活でひどい目にあいましたので、もう一度考え直したらよかったですが、彼は何も変えないでそのまま、ソドムに残りました。何の役にも立たなかった財産をそのまま信じて、何の助けにもならなかったソドムをそのまま信じて、ソドム生活を続けました。これから来ようとしている暗黒の未来を備えることができませんでした。


５．財産の故に逃げられない愚かさ
１９：１５−１６、２３−２６
１５. 夜が明けるころ、御使いたちはロトをせき立てて言った。「さあ立って、あなたの妻と、ここにいる二人の娘を連れて行きなさい。そうでないと、あなたはこの町の咎のために滅ぼし尽くされてしまいます。」
１６ 彼はためらっていた。するとその人たちは、彼の手と彼の妻の手と、二人の娘の手をつかんだ。これは、彼に対する主のあわれみによることである。その人たちは彼を連れ出し、町の外で一息つかせた。
２３ 太陽が地の上に昇り、ロトはツォアルに着いた。
２４ そのとき、主は硫黄と火を、天から、主のもとからソドムとゴモラの上に降らせられた。
２５ こうして主は、これらの町々と低地全体と、その町々の全住民と、その地の植物を滅ぼされた。
２６ ロトのうしろにいた彼の妻は、振り返ったので、塩の柱になってしまった。

　財産は本来良いものです。財産は本来、危機の時、私たちの命を守ってくれるものです。普段は財産があるから、平和の暮らしができます。しかし、財産があるからこそ、判断が鈍くなることもあります。特に災難の時は財産があるからこそ、災難から逃れられなくなることもあります。

　ロトにとって財産は何でしょうか？　アブラハムと一緒に暮らしていた時は財産が増えました。おかしいことに財産が増えたので、アブラハムと別れざるを得ませんでした。アブラハムと別れたので、財産が減りました。ソドムに住んでいた時、捕虜となり、財産がゼロになりました。一度、財産を全部無くしましたが、アブラハムのおかげで、全部取り戻しました。しかし、二回目、ソドムが滅びる時、全部失いました。今度は財産だけでなく、家族も全部失いました。

　私たちにとって財産は絶対的な価値ですか、相対的な価値ですか。私たちが持っている財産は危機の瞬間何をしてくれるでしょうか？　私たちは自分の財産を信じていますか？　財産を信じている方は財産に裏切られます。財産は普段は神のような力を持っていますが、神ではありません。財産は神さまが下さった祝福の一つに過ぎません。神さまの栄光のために財産を使いますと人々を危機から救い出す働きをします。

　アブラハムがそうでした。アブラハムは神さまから頂いた財産を使って318人の兵士を備えました。その兵士たちがアブラハムの安全を守り、ロトを危機から救い出し、ソドムを危機から救い出す働きをしました。アブラハムにとって財産は絶対的なものではありません。異国で暮らしながら、身の安全を守って下さったのは神さまです。家族との幸せをくださったのは財産ではなく、神さまです。アブラハムの老後を備えてくれたのは財産ではなく、神さまです。神さまは財産を通してアブラハムを祝福して下さり、アブラハムはその財産の力を使って人々を助けました。人々を助けることで神の栄光を現わしました。財産の良い使い方です。私たちはどうすれば財産を蓄えられるか、すべての神経を使っていますが、なぜ財産を蓄えようとしているのか、その根本的な質問が必要です。なぜ財産を蓄えたいのか、この質問を長く、しつこく、常にご自身に尋ねてください。神の栄光のために、人々のためにと言う答えが出てくるまで。



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