2022年3月27日

マタイの福音書　27章45〜46節

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜ 十字架上の叫び ＞


　イエス様が十字架にかけられた後、しばらく経ってから全地は暗くなりました。そして、最後が近づいた時、イエス様は父なる神にこう叫ばれました。
「わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか」
このイエス様の十字架の叫びを私たちはどう受け止めたら良いでしょうか？　父なる神を恨んでいると誤解なさる方も多いです。しかし、イエス様が父なる神を恨むことはないでしょう。それでは何でしょうか？　イエス様のこの叫びの深い意味を考えてみましょう。


１．詩篇からの引用
　イエス様の叫びは詩篇22編１節のダビデの詩をそのまま引用なさったものです。
「わが神　わが神　どうして私をお見捨てになったのですか。　私を救わず　遠く離れておられるのですか。私のうめきのことばにもかかわらず。」
ダビデが深刻な危機に追い込まれた時、神の助けが見えなくて、切羽詰まった瞬間、神に叫びました。「わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか」

　しかし、ダビデはイエス様と違いまして、その危機を乗り越えた後、神を賛美しました。全能の神がダビデを救い出してくださったからです。ですから、詩篇２２編の後半は賛美が続きます。22節「私はあなたの御名を兄弟たちに語り告げ、会衆の中であなたを賛美します」

　けれども、イエス様は父なる神からの救いはなく、そのまま十字架で息を引き取られました。詩篇２２編みたいに賛美で終わるのであるなら、「わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか」は賛美の一部分です。

　しかし、十字架の悲劇で終わってしまうと「わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか」は文字通り、捨てられた神の子の悲鳴です。


２．捨てられたメシアの叫び
　「わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか」は確かに神への恨みではありませんが、父なる神に離されたメシアの叫びであることは間違いありません。イエス様は十字架の上で父なる神から断絶されています。ゲッセマネの園からずっと１２時間くらい、父なる神と断絶されています。イエス様がゲッセマネの園でもだえ震えていた理由にもなります。イエス様は父なる神と分離されていることが自然現象でも現れました。十二時から午後三時まで、3時間、闇が全地をおおいました。父なる神がイエス様のそばにおられない象徴的な雰囲気です。

　十字架は罪人がさばかれるところです。私たちの代わりに罪人となっているイエス様のそばに父なる神はおられません。父なる神が一緒におられない孤独、恐怖でイエス様は十字架の上で悲鳴をあげました。


３．捨てられた叫びの深い意味
　カルバンと言う神学者はこう言いました。もし、キリストが肉体だけ死なれたのであるなら、その死は有効ではなかったはずだ。もし、イエス様の霊が同じく罰せられなかったら、イエス様は私たちの肉体だけの救い主にしかない。

　イエス様が十字架の上で、体も魂も捨てられたから私たちの完全な救い主となりました。例えば、十字架はイエス様の肉体が捨てられるところでした。肉体が捨てられるところだから、肉が裂かれ、血を流されました。イエス様の肉体が私たちの代わりに十字架の上で完全に捨てられました。それによって私たちの体は救われ、将来、イエス様と同じく聖なる体でよみがえります。

　同じように「わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか」はイエス様の魂が捨てられる場面です。イエス様の魂が私たちの代わりに悲鳴と共に捨てられました。それによって私たちの魂は救われ、将来、永遠にきよい霊としてよみがえります。

　「わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか」はイエス様の魂が捨てられるクライマックスの瞬間です。使徒信条には次のように表現しています。「十字架につけられ、死にてほうむられ、よみにくだり」。「よみにくだり」の具体的な意味は分かりません。けれども、イエス様が父なる神から一時的に捨てられたことは間違いありません。そして、イエス様のこの悲鳴が私たちの魂をよみから救い出したことも確かなことです。「わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか」とイエス様が叫ばれたので、私たちの魂が救われました。イエス様が「わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか」と叫ばれなかったら、私たちの魂も救われなかったと言えるくらい私たちの救いに決定的な叫びです。私たちには永遠の命に至る叫びです。


４．救いの完成
　「わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか」の叫びの後、イエス様の最後の３つのことを語られました。

１）「わたしは渇く
ヨハネの福音書 １９：２８
２８ それから、イエスはすべてのことが完了したのを知ると、聖書が成就するために、「わたしは渇く」と言われた。
父なる神に見捨てられた霊的な渇きが肉体にも現れました。真の命なる神から離れた時、現れる現象です。神から離れると肉体も、魂も飢え渇きます。水では解消できないひどい渇きです。

　私達にも同じ飢え渇きがあります。皆様には現在、このような飢え渇きがありますか？　霊的な渇きを感じられたら神に立ち返り、救いを求めましょう。生活も、魂も、精神も、体も全部渇きを感じているなら、主にあわれみを求めましょう。

２）「完了した」
ヨハネの福音書 １９：:３０
３０ イエスは酸いぶどう酒を受けると、「完了した」と言われた。そして、頭を垂れて霊をお渡しになった。

完了形です。
すでに成し遂げられましたし、これからも永遠に成し遂げられた状態で残る意味です。イエス様が私たちの救いを完成されました。肉体の救いも、霊の救いも完全に完成されました。

３）「わたしの霊をあなたの御手にゆだねます」
ルカの福音書 ２３：４６
イエスは大声で叫ばれた。「父よ、わたしの霊をあなたの御手にゆだねます」こう言って、息を引き取られた。
父なる神に見捨てられているのに、それでも、最後は父なる神の御手に委ねられました。

　わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか」は父なる神から、御子イエス・キリストが見捨てられたクライマックスの瞬間だと申し上げました。けれども、三位一体の神が一時的でも分離されることはありますか？

　確かに、理解力が足りない人間の頭では矛盾しているようにも見えます。私も愚かな人間なので、皆様の疑問に答えられません。十字架は神のあらゆる知恵が込められているところなので、１００％は理解できません。十字架の恵みはあまりにも不思議な神の知恵なので、100％理解できる人はいないと思います。理解できなくても良いです。私の救いのために御子なる神であるイエス様が、父なる神から見捨てられ、神の栄光から分離されたのは、イエス様の愛であり、父なる神の愛です。私たちはその愛を信じます。

　そして、三位一体の神は永遠に分離されることなく、矛盾することもなく、いつも一緒におられることも信じます。ただただ、私たちはイエス様に習って謙遜に祈りたいです。「父よ、わたしの霊をあなたの御手にゆだねます」。



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