2022年1月9日礼拝

2022年1月9日

エズラ記　3章1～13節

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜喜びの叫び声と泣き声　＞

　人はあまりにも嬉しい感動を受けて、二つの反応をします。一つは喜びのあまり、大声をあげて泣きます。もう一つはあまりにも嬉しいあまり、喜びに溢れて笑いの声を張り上げます。涙と笑いは正反対ですが、しかし、同じ感動に、ある人には涙として表し、ある人には笑いとして表します。

　今日の箇所のイスラエル民がそうでした。主の宮の礎が据えられたのを見て、「以前の宮を見たことのある多くの老人たちは、目の前でこの宮の基が据えられたとき、大声をあげて泣きました。「一方、ほかの多くの人（若い世代）は喜びにあふれて声を張り上げました」
両方とも喜びであることは同じですが、その喜びを別の形で表しました。彼らは同じ喜びを別の形で表しました。その理由の中に彼らの壮絶な人生の物語があります。

１．大声をあげて泣いた老人たち
　祭司、レビ人、一族のかしらたちのうち、以前の宮を見たことのある多くの老人たちは以前のソロモンが建てた神殿を記憶しています。彼らの記憶にはソロモンが建てた華やかな神殿があります。そして、その神殿がことごとく壊れ、焼かれた記憶があります。エルサレム住民が容赦なく、殺された記憶があります。彼らにはバビロンに連れ去られる時の嘆き、悲しみ、悔しい記憶があります。バビロンに連れ去られる時の嘆きの詩篇を見れば彼らの気持ちが分かります。

詩篇137編
１バビロンの川のほとり、そこに私たちは座り、シオンを思い出して泣いた。
バビロンの川のほとりは老人たちが若い時、連れ去られた場所です。生まれ育った故郷であるエルサレムを思い出しながら泣いています。帰りたくても帰れない悲しみが溢れて、涙が出てきました。

２街中の柳の木々に、私たちは竪琴を掛けた。柳の木々に、竪琴を掛けたことはこれ以上、竪琴を使わないから捨てたことです。故郷から持ってきた唯一の慰めである竪琴を捨ててしまうとどうしますか?　子どもの時から歌っていたこの歌を歌うために、形見のようなこの竪琴を捨ててしまうとどうしますか？

　なぜ、こんなに大事な竪琴を捨ててしまおうと決心したのでしょうか？　もう二度と故郷の歌を歌わないと決心したからです。その理由はこうです。

３それは私たちを捕らえて来た者たちが、そこで私たちに歌を求め、私たちを苦しめる者たちが、余興に「シオンの歌を一つ歌え」と言ったからだ。これは屈辱です。ユダヤ人を捕らえて来た者たちを喜ばせるため、シオンの歌を歌うわけにはいきません。シオンの歌は神様を賛美する歌です。神様を賛美する歌を異邦人の余興のために歌うことは出来ません。特にこのバビロンの人たちが神の宮をことごとく破壊したのに、この兵士たちのために歌うことは出来ません。もう二度とシオンの歌は歌わない覚悟で竪琴を捨てました。

４どうして私たちが異国の地で、主の歌を歌えるだろうか。彼らが竪琴を捨てた決断の言葉です。

５エルサレムよもしも私があなたを忘れてしまうなら、この右手もその巧みさを忘れるがよい。

６もしも私があなたを思い出さず、エルサレムを至上の喜びとしないなら私の舌は上あごについてしまえばよい。

　竪琴は捨てたので、竪琴を演奏しないから、演奏できなくなります。右の指で演奏していたこの感覚をこれから忘れます。しかし、竪琴は捨てても、竪琴を演奏できなくなっても、決して、神の都であるエルサレムは忘れることはないともう一度決心しました。「この右手もその巧みさを忘れるがよい」は演奏できなくなることです。

「私の舌は上あごについてしまえばよい」は死ぬことを意味します。演奏できなくなっても、死んでもエルサレムを忘れることはないという決心です。

　彼らはこのような屈辱と決心の中、７０年間をバビロンで過ごしました。そして、いよいよ70年間の捕虜時代が過ぎて、神さまによる奇跡の時間が来ました。ペルシア王のキュロスが王座についてからすぐ、イスラエル民の解放を宣言しました。エルサレム神殿の再建を命じました。一度、滅びた国が再び回復することはほとんど例がないことです。

エズラ１：１―４
１ペルシアの王キュロスの第一年に、エレミヤによって告げられた主のことばが成就するために、主はペルシアの王キュロスの霊を奮い立たせた。王は王国中に通達を出し、また文書にもした。

２「ペルシアの王キュロスは言う。『天の神、主は、地のすべての王国を私にお与えくださった。この方が、ユダにあるエルサレムに、ご自分のために宮を建てるよう私を任命された。

３あなたがた、だれでも主の民に属する者には、その神がともにいてくださるように。その者はユダにあるエルサレムに上り、イスラエルの神、主の宮を建てるようにせよ。この方はエルサレムにおられる神である。

４あとに残る者たちはみな、その者を支援するようにせよ。その者がどこに寄留しているにしても、その場所から、その土地の人々が、エルサレムにある神の宮のために進んで献げるものに加え、銀、金、財貨、家畜をもってその者を支援せよ。』」

「以前の宮を見たことのある多くの老人たちは、目の前でこの宮の基が据えられたとき、今までの70年間の屈辱、悔しさ、悲しみの瞬間を一つずつ思い出しました。そして、現在のこの信じられない奇跡のような風景が目の前に現れています。その色々の感情が混ざって、大声をあげて泣きました。

２．喜びの叫び声をあげた若い人たち
　若い世代の人たちはバビロンで生まれ、育った人たちです。ソロモンの神殿を見たこともありません。エルサレムに関する懐かしさもありません。逆に彼らにとってはバビロンが生まれ、育った懐かしい故郷です。彼らにとってエルサレムと神殿は親から聞いた話だけです。

　若い世代の人たちはエルサレムに帰還するよりはバビロンで暮らした方が良いです。彼らにとって故郷はエルサレムではなく、バビロンです。

　生活基盤もバビロンにあります。家族、親戚、友達もバビロンにいます。バビロンでの暮らしが安全です。エルサレムに帰還することは彼らにとって大きな危険を伴うことでした。
３節「彼らは、周りの国々の民を恐れていたので、祭壇を所定の場所に設けた」

　エルサレムは廃墟のままであり、外部からの攻撃に防御できない状況でした。生活基盤も最初から作らなければならない大変なことでした。相当の覚悟が必要な決断でした。しかし、それでも彼らは先祖の神さまを信じて、彼らの将来を犠牲にしました。彼らは「目の前でこの宮の基が据えられたのをみて」、今までの苦労と犠牲が報いられました。そして、エルサレム神殿の基礎が据えられるのを見て、新しい希望を見出しました。神さまを信じて、新しい信仰の兄弟姉妹たちと共にエルサレムで暮らそう。ですから、大きな喜びの声を上げました。

　宮の基が据えられたとき、多くの老人たちは大声をあげて泣き、一方、ほかの多くの人々は喜びにあふれて声を張り上げ、そのため、喜びの叫び声と民の泣き声をだれも区別できなくなりました。神さまの奇跡による感動の瞬間でした。

３．私たちの未来も同じくなれば
　東京教会の未来にも同じく、二つの大きな声があげられる日が来るように祈りたいです。私は皆様の二つの声を聞いてみたいです。大声をあげて泣く皆様。そして、喜びの叫び声をあげる若い世代の人たち。

　大声をあげて泣く方は長年間、教団の援助によって支えられた記憶を持っている方でしょう。喜びの叫び声をあげる若い世代の人たちの声も一緒に聞きたいです。若い世代の方の希望に満ちた喜びの声を聞きたいです。

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