2021年9月12日

ガラテヤ人への手紙　6章12～14節

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜ 人々の異なる十字架への態度 ＞


　パウロには十字架しかありません。パウロは十字架以外には誇りとするものが決してないと心に決めました。十字架を強調するとユダヤ人と衝突しますが、それでも十字架しかありません。その反面、偽りの教師たちは、十字架は強調しないで、ユダヤ人と同じく律法を強調したので、ユダヤ人と衝突することがありませんでした。信仰も守りながら、ユダヤ人とも衝突なく、ずる賢い方法です。しかし、衝突を避けようとしたので、十字架を失ってしまいました。十字架は唯一の救いの方法なのに、十字架を失うとすべてを失うことになります。

　現代の人他たちには反論があります。十字架の罰がなぜ、神の愛なのか？　十字架の死がどうして神の愛なのか理解できない。私の代わりに裁かれ、死ぬのがどうして神の正義なのか、理解できないと言われたら、返事が出来ません。私たちにパウロのような確信が必要です。私たちにパウロのような十字架の誇りが必要です。私たちにとって十字架は何でしょうか？


１．十字架の愚かさを指摘するこの世
十字架を信じない方にはそれなりのちゃんとした理由が４つくらいあります。
（１）弱々しい十字架
　ユダヤ人の目線で見るとイエス様はメシアではありません。 旧約からのメシアは力強い全能のお方で、雲に乗ってこの地に来られ、不正、不義の世界をお裁きになり、苦しんでいる神の民を救い出してくださるお方のイメージです。それなのに、イエス様はこの地に来られ、最初はあらゆる奇跡、天国の教え、癒しなどがありましたので、大いに期待していましたが、最後は十字架の上で何の奇跡も、御業もないまま、あまりにも弱々しく、空しい死を遂げました。

　十字架上で、何の抵抗もなく、無気力な死を遂げたイエス様を見て皆躓きました。イエス様の弟子たちでさえ躓きました。神に呪われ、木の上で何も出来ず死んだ者をメシアだと信じるわけにはいきません。ギリシャ人の目にも十字架こそ、あまりにも無力です。十字架は奥義なので、神の恵みと憐れみを頂いていない人の目には愚かさの代表です。

（２）あまりにも単純すぎる十字架
　人々の目には十字架による救いは論理的ではないと思っています。十字架による救いは単純過ぎると感じています。罪人がなぜ、救われるのか？　ギリシャ哲学みたいに、もうちょっと知的な説明がほしいですが、単純過ぎます。単純すぎるので、逆に怪しいと思っています。人間の知性で考えると論理的ではありません。私たちもみな、論理的な思考に慣れてしまって、十字架でさえ、出来る限り論理的に、出来る限り知的に理解しようとしています。十字架のメッセージは単純なので、知性を求める人々は十字架を無視しています。この傾向は１Cの人たちも２１Cの人たちも同じです。

（３）不義のように見える十字架
　この世の正義は本人の罪は本人が背負うことです。本人の罪を他人が背負うことは不義だと認識しています。「ただより怖いものはない」という諺に慣れているので、ただ十字架だけ信じることで救われることを疑っています。イエス様が私たちの代わりに贖ってくださったことはこの世の価値観ではあり得ない不義です。神の子と言いながら、神はなぜ、ご自分の子を代わりに殺して、それを神の正義だと言っているのか？　神の義はどうしても人間の頭では理解できません。特に責任感が強くて、真面目な性格の人であればあるほど、贖いの十字架を受け入れるのは難しいです。自分の罪の責任をどうして、イエス様に転嫁するのか？

（４）血を信じる信仰は忌まわしい教え
　優れた優雅な哲学を求めるギリシャ人の目にはイエス様の流された十字架の血を信じることはあまりにも忌まわしい教えです。優雅な現代の文明、文化の中に住んでいる現代人にとって、血を流して、罪を贖う宗教はあまりにも古代の風習に見えます。血を信じる信仰はあまりにも時代遅れのように見えて、十字架を受け入れません。

　これらの四つのことはこの世が十字架の愚かさを指摘したものです。これからは十字架がこの世の罪を指摘します。


２．この世の罪を指摘する十字架
ローマ３：２３
「すべての人は罪を犯して、神の栄光を受けることができず」
　すべての人だから全人類のことです。「すべての人」の範疇の中に、ユダヤ人も、ギリシャ人も、古代人も、現代人も、信者も、未信者も入ります。信徒の皆様も、牧師の私も、一人も例外なく、罪人です。十字架は全人類の罪を指摘しています。

　心の奥底に隠している罪が指摘されると誰でも激しく怒ります。十字架がこの世のすべての人の罪を指摘するので、人々は我慢出来ません。ユダヤ人も、ギリシャ人も、古代人も、現代人も、全員同じく十字架を嫌っています。未信者だけではなく、キリスト者の私たちも嫌がっています。すでにイエス様を信じて救われているのに、それでも、未だに昔の罪があります。自分自身も罪人なので、皆様に悔い改めなさいと力強く言えません。「悔い改めなさい」ではなく、「悔い改めましょう」しか言えません。私も深刻な罪人だからです。

　ですから、神様の憐れみを求めています。信仰者だから神様の憐れみを求めます。神の憐れみを求める人は神の子どもである証拠です。

　信仰者ではない方は神様を信じないので、神に憐れみも求めません。罪を認めないので、罪そのものを否定します。罪を犯してないふりをしています。優雅な人であるふりをしています。ですから、心の奥底に隠している罪を指摘する十字架を否定し、敵対します。十字架を歓迎する人は誰一人いません。十字架は私の一番の罪を指摘するので、何よりも痛いです。十字架は私の一番の恥ずかしいところを指摘するので、何よりも恥ずかしいです。人々は恥ずかしいこと、痛いことに耐えられません。

　イエス様を十字架にかけて人たちも同じでした。イエス様に罪を指摘されました。何よりも、誰よりも神を愛しているふりをしていたパリサイ人たちはイエス様にばれてしまいました。パリサイ人たちは実は何よりも、誰よりもお金を愛していましたが、それをイエス様にばれてしまいました。その恥ずかしさがイエス様への憎しみに代わりました。

　大祭司の人たちの罪もイエス様にばれてしまいました。何よりも、誰よりも神を恐れているふりをしていましたが、イエス様にばれてしまいました。神よりはローマを恐れ、人々を恐れていたことがばれてしまいました。それは超恥ずかしいことです。ばれるよりは死ぬ方が増したと思うくらいの秘密がばれたので、それが激しい怒りを引き起こし、イエス様を十字架につけました。優れた文明、文化の誇りの中に住んでいる現代人は十字架の前では裸になります。人間は裸になる恥ずかしさに耐えられません。十字架は私たちの隠している罪、隠れているすべての罪を容赦なく表面化します。十字架の前で人間は絶望になりますが、ですから十字架が嫌いです。


３．救いの道具に変わる十字架
　私に死を宣告したこの十字架ですが、イエス様が代わりに背負われました。イエス様が私の代わり、辱められ、私の代わりに死なれました。そして、イエス様の命を私たちに下さいました。死が命に代わり、恥が誇りに代わりました。絶望が希望に代わりました。罪から救われる道は一応できました。

　 この十字架の分かれ道で人間は選択せざるを得ません。生まれ変わるため、隠しているものを表面化するか？　救われなくても良いから、隠していたものが公になるよりはこのまま死んだ方がましだ。皆様はどちらの傾向が強いですか？　しばらく痛くても、恥ずかしくても、解決のためなら、元から徹底的に明らかにするタイプですか？　恥は死よりも耐えられないと思っているから隠すタイプですか？　救いを求める人には十字架で死なれたイエス様の奥義が見えます。そして、救われた人は何よりも十字架を誇りとします。私たちは主に恵まれた人であり、信仰が与えられた人です。信仰の目で十字架を見上げてみましょう。そうすれば私たちにもパウロみたいに十字架だけが誇りとなります。



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