2021年5月23日

使徒行伝　4章32節〜5章6節

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜ 分かち合う経済共同体 ＞


　人は自分のためにお金を使うと幸せと生きがいを感じます。その喜びを知っているので、自分のためにお金を使おうと貯めています。しかし、他人のために分かち合う時の喜びも大きいです。初代教会の人たちはその喜びを知りました。初代教会の人たちは聖霊の喜びに満たされ、その喜びの故に持っていた財産や土地を売って、貧しい兄弟達に分け与えました。今日は初代教会の経済共同体に関するお話しです。


１．所有欲から解放された人たち（4：３２−３５）
　エルサレム教会の信者数はますます増えました。2章ではペテロの説教によって多くの人が悔い改めたので、信者が増えました。3章でペテロとヨハネが一人を癒しましたが、その影響で多くの信者が増えました。信者が増えることは嬉しいことですが、その分、多額のお金がかかることを意味します。

　感謝なことはエルサレム教会が出来てから、今まで何年が過ぎましたが、それでもお金が足りなくなったことはありませんでした。その一番の理由は多くの信者が持ち物を共同体の生活のために自ら進んでささげたからです。32節を見ると「信じた大勢の人々は心と思いを一つにして、だれ一人自分が所有しているものを自分のものと言わず、すべてを共有して」いました。これは聖霊による奇跡です。個人の財産を無理やりに共同化するとそれは共産主義であり、独裁者ですが、皆が心と思いを一つにして、自分の所有を自分のものだと言わないことは聖霊様の働きではないと不可能なことです。

　聖霊が信徒たちの心に神の国を与えられました。彼らは未来のことを神様の御手に委ねました。将来の心配よりは現在の天国の喜びの方が大きいです。ですから、未来のために余計に蓄える本能から解放されました。聖霊様は人間の本能、本質まで変えられるお方です。生まれつきの本能、本性、本質まで変わることだから、まさに生まれ変わることです。

　初代教会の信者たちは土地などを売買したお金を使徒たちのところに持ってきました。初代教会の信者たちは１２使徒たちを１００％信じていました。１２使徒たちも、もうこれ以上お金が要らない人となりました。１２使徒たちはこれ以上、お金に執着する必要がありません。聖霊様が必要な時、必要な分、与えて下さるので、お金を握りしめて、お金に拘る必要がありません。お金を所有すると逆に不便になるだけの境地まで達しました。使徒たちにとってお金はただ、必要としている人たちに分け与えるための手段に過ぎません。

　聖霊様がお金に関する人々の価値観を変えられました。この世にはない新しい経済共同体が生まれました。この共同体はやがて、迫害によって解散しますが、解散するときまで続きました。


２．土地をささげたバルナバ
　初代教会には大勢の人が土地を売って、その代価を使徒たちに持ってきましたが、その中で一人がバルナバと言う人です。彼は地中海にある小さい島国であるキプロスで生まれたユダヤ人です。聖霊降臨によって彼もある日突然、人生が変わりました。

　彼も畑を所有していましたが、それを売って初代教会のためにささげました。聖霊に満たされ、神の国と神の義のために生きようと決心した以上、もう、耕す畑など要りません。彼は今までどんな仕事をしていたのか分かりませんが、ペンテコステの日以来、彼の仕事はイエス様を全世界に伝える伝道者に生まれ変わりました。彼の本名はヨセフでしたが、初代教会ではバルナバに代わりました。バルナバの意味は「慰めの子」です。聖霊様に満たされてから、彼は人々を慰める人に代わりました。躓いている人を慰め、もう一度奮い立たせる働きは素晴らしい生き方です。お金に執着して、他人と競争して、お金を奪い取る生き方よりは何倍も良い生き方です。私たちもバルナバのような生き方に代わりたいです。

　話変わりますが、パウロが教会に入れるように決定的な働きをしたのがバルナバです。パウロは若い時、主の教会を迫害したので、なかなか教会に加入するのが難しい立場でしたが、そのパウロを教会に導き入れたのが、このバルナバです。パウロの素晴らしい働きの裏にはバルナバなしには出来ないことでした。


３．聖霊を騙した夫婦
　初代教会の信徒の全員が聖霊に満たされ、喜んで財産をささげている中、悲しい出来事が起こりました。アナニアとサッピラ夫婦が聖霊を騙したことです。この夫婦にも土地がありましたので、その土地を売り、その代価を使徒たちのところに持ってきました。

　ところが、この夫婦は相談して、土地を売買した金額から一部を隠しました。そして、その残りだけもってきて、全額ささげたと嘘をつきました。彼らがペテロにうそをついた理由はこうです。

　初代教会の信徒たちが土地を売って、財産を教会にささげることはあくまでも個人の自由の選択でした。ささげたくないのに、無理してささげている人は一人もいませんでした。皆ささげているから仕方なくて、いやいやしながらささげた人も一人もいません。それなのに、なぜ、アナニアとサッピラ夫婦は無理して土地を売って、しかも、その一部を隠して、残りを全額であるかのようなうそをついたのでしょうか？

　これは彼らが初代教会のお金の流れの仕組みを悪利用していたからです。３４−３５節を参考にしてみると仕組みはこうです。彼らの中には、一人も乏しい者がいなかった。地所や家を所有している者はみな、それを売り、その代金を持って来て、
３５：使徒たちの足もとに置いた。その金が、必要に応じてそれぞれに分け与えられたのであった。

　土地を売った代金を使徒たちに持ってきます。土地を売ってしまった信徒はこれからお金がないので、必要なお金は使徒たちからもらいました。お金がない人を優先に共同体のお金が配られました。アナニアとサッピラ夫婦はもともと、土地を所有していて、財産もありましたので、使徒たちからお金をもらわなくても良い裕福な人でした。この夫婦は土地を売って、その一部は隠して、ペテロにはうそをついて、教会から必要なお金をもらうつもりでした。彼らは初代教会の経済システムを悪利用しました。アナニアとサッピラ夫婦は金儲けしようとしていました。

　彼らはイエス様を信じる前の生き方です。イエス様よりは、神の国よりは、お金の所有欲から解放されていません。彼らは未だに、イエス様ではなく、お金の神を信じていました。救われてない夫婦です。この夫婦のような人がいるとエルサレム教会は維持できません。二人の夫婦の罪は大きなものでした。彼らは不信仰の故に死にました。そして、夫婦の死を見て、教会は聖霊を恐れるようになり、もっときよくなりました。神を恐れることが、その人をきよくします。


結論
　現代の教会はエルサレム教会みたいな真似をすることは出来ません。エルサレム教会みたいな経済共同体、経済システムは現代教会には使えません。しかし、一つの精神は学びたいです。32節「信じた大勢の人々は心と思いを一つにして、だれ一人自分が所有しているものを自分のものと思わず、すべてを共有するつもりで生きたことです。

　 私のお金が私のもののようで、私のものではありません。私のお金が私のもののようで、神様のものです。私のお金が私のもののようで、皆の有益のために使うものです。私のお金を神様のもののように使うことは相当、知恵が必要であり、その都度の祈りが必要な難しい仕事です。



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