2020年10月11日礼拝

2020年10月11日

ルカによる福音書　9章51～56節

　　　　　　　＜イエス様はいったいだれだろう7：歓迎しない反対者も受け入れるお方＞

　イエス様は生涯、特に３年間のお働きの中、何回もガリラヤとエルサレムを往復されました。イエス様が行かれると、歓迎するところもあれば、歓迎しないところもありました。イエス様が特に歓迎されなかったところは故郷のナザレでした。不思議にイエス様の故郷であるナザレでは歓迎のところか、無視されました。逆に何の関係もないところでは歓迎されました。今日の箇所は北にあるガリラヤでもなく、南にあるエルサレムでもない、その間にあるサマリアで起きた出来事です。

　イエス様はいったいだれだろう。サマリア人も「イエス様はいったいだれだろう」という疑問があったはずです。彼らの反応は冷たかったのです。彼らはイエス様を歓迎しませんでした。なぜ、彼らはイエス様の迎え入れなかったのでしょうか？

１．イエス様を迎え入れないサマリア人
　イエス様は地上のお働きを終えるために、エルサレムへの最後の旅を始めました。北のガリラヤから南のエルサレムに行くためにはど真ん中にあるサマリア地域を通過しなければなりません。その理由で、弟子を事前に送り出しました。しかし、サマリア人はイエス様と弟子たちを迎え入れませんでした。その理由は「イエスが御顔をエルサレムに向けて進んでおられた」からです。

　イエスが御顔をエルサレムに向けて進んでいることとサマリア人がイエス様を歓迎しないことといったい何の関係があるのでしょうか？　これらには歴史的な背景があります。イエス様より約７００年前に遡りますが、サマリアは紀元前７２０年にアッシリアによって滅びました。その後、サマリアには多くの外国人が移住したので、宗教生活、社会生活など、サマリア人は著しく異邦人のようになりました。それに加えて紀元前４世紀にはアレキサンドロス大王がマケドニア人をサマリアに移住させました。

　その反面、南のユダはエルサレム神殿を中心として信仰の純粋性を強調したので、ユダヤ人とサマリア人は激しく対立していました。ユダヤ人は異教徒のように変わってしまったサマリア人を軽蔑して、エルサレム神殿には一切入れないようにしました。

　サマリア人もそれに対抗して、サマリアにある山に別の神殿を立てて礼拝しました。サマリア人がエルサレムまで行かなくても、礼拝できるように神殿を建てましたが、しかし、正統性はありません。この葛藤があるからユダヤ人は南ユダと北ガリラヤを往復するとき、ど真ん中にあるサマリアを通過しないで、わざと避けてヨルダン川の東の方を迂回しました。

　このような歴史的な背景があるから、エルサレム神殿に向かうイエス様をサマリア人が受け入れるはずがありません。仮に、イエス様がメシアだとしても、それはあくまでも、ユダヤ人だけのメシアであって、自分たちのメシアだとは認識していません。ユダヤ人がサマリア人を歓迎しませんが、サマリア人もユダヤ人を歓迎しません。北のガリラヤの人は南のユダヤ人とかかわりがあるから、ユダヤ人とかかわりがある人は誰でもサマリアの敵です。サマリア人を積極に歓迎する人だけがサマリア人の友だと思っています。

　先週、申し上げたイエス様の弟子たちと同じ論理です。「先生。あなたの名によって悪霊を追い出している人を見たので、やめさせようとしました。その人が私たちについて来なかったからです。」
イエス様に積極に従う弟子でなければ、イエス様の見方ではないと弟子たちは思っています。弟子たちの論理は私たちの論理でもあります。

　しかし、イエス様はそう教えていません。「あなたがたに反対しない人は、あなたがたの味方です」　イエス様は味方の範囲が広いです。反対しない人は味方です。サマリア人へのイエス様の態度を見ると消極に反対する人でさえ、未来の見方としてみておられます。イエス様を十字架で殺そうとしている人たちは積極的な反対者ですが、サマリア人はまだまだ、消極的な反対者です。ただ受け入れないだけです。

　イエス様と弟子たちの見方の判断基準が違います。弟子たちにとって誰でも歓迎してくれないものは味方ではありません。イエス様を歓迎しないサマリア人にヤコブとヨハネの二人の弟子は腹が立ちました。

２．サマリア人に立腹している二人の弟子
　イエス様を歓迎しないサマリア人を見て、ヤコブとヨハネが腹を立てている気持ちは理解できます。しかし、天から火を下して、サマリア人を焼き滅ぼすことは何でしょうか？　ヤコブとヨハネの過剰反応です。イエス様が今まで何回も無視されたり、歓迎されなかったりしたのに、なぜここまで過剰反応するのでしょうか？

　ヤコブとヨハネの過剰反応にはいくつかの深刻な問題があります。イエス様はいったいだれだろうという疑問に彼らは神の子、メシアだと正しく答えました。ところが、その正しい答えが逆に彼らをおかしい人にしてしまいました。

　一つ目は、ヤコブとヨハネは変貌山で神の姿に変わったイエス様を見ました。「イエス様こそ、神の子、キリストなのに、サマリア人のような者がイエス様を受け入れないなんて、とんでもないことをしている、赦せないことだ」と思いました。イエス様への熱い忠誠心が彼らをおかしくしました。イエス様への熱い忠誠心、そのものは素晴らしいですが、しかし、イエス様の本当の気持ちは分かっていないのが問題です。

　イエス様はサマリアの人たちが受け入れてくれないことで怒っていません。イエス様は彼らのためにも十字架を背負われます。イエス様は歓迎してくれないサマリア人のためにも十字架を背負われようとしているのに、彼らを滅ぼそうとしていることはとんでもないことです。ヤコブとヨハネはそのイエス様の心はまだ分かっていません。

　二つ目は、ヤコブとヨハネは「私たちが天から火を下して、彼らを焼き滅ぼしましょうか」と言っていますが、彼らにその能力があるのでしょうか？　変貌山で神秘的なイエス様の姿を見てから、彼らはまるで自分たちは何でもできると勘違いをしているのではありませんか？　まさに傲慢になりました。仮に、彼らにそのような力があったとしても、人を滅ぼすために神の力を使ってはいけません。三つめは、イエス様でさえサマリア人を直接さばかれないで、父なる神にゆだねておられるのに、人間の弟子たちが神の奇跡を使ってさばくことはありえないことです。

３．十字架の前兆となるサマリア人の拒否
　十字架はメシアであるイエス様を拒否することを意味します。サマリア人に歓迎されなかったイエス様はこれから、エルサレムに行ってユダヤ人にも歓迎されません。彼らに神の国を伝えようとしているのに、受け入れません。サマリア人の拒否から始まって、ユダヤ人の拒否で終わりました。イエス様の復活後、今度は弟子たちが福音を伝えましたが、福音も拒否されました。私たちが伝える福音も拒否されています。私たちはただ、彼らに天国の幸せを分かち合おうとしているだけなのに。

　それでも私たちは彼らを敵として認識してはいけません。未来の見方です。そもそも、私の敵、私の見方と区分すること自体が罪の産物です。イエス様は私たちにあなたの敵を赦し、彼らのために祈りなさいと教えられました。あなたの敵を愛しなさいと教えられました。

　私の愛がまだ足りないですが、少なくとも敵を増やす必要はないと思います。二人の弟子たちのやり方は敵を増やします。私たちの価値観で生活すると敵が増えます。私を歓迎してくれる人だけが見方、少しでも私の存在を否定する人は私の見方ではないと思っていると敵が増えます。私たちの足りない考えが敵を増やしています。私たちの罪が敵を増やしています。イエス様の教えに従って、人々のために祈りますと皆が未来の見方に変わります。今は消極的な反対者でも、未来は私たちの見方と変わります。

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