礼拝メッセ−ジ
2019年12月8日

ペテロの第一の手紙　2章13〜17節

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜ キリスト者市民と国の関係 ＞


　私たちの国籍は天にあります。だからと言って、私たちのパスポートに国籍が天国とは書いていません。それぞれの国の名前が書いてあります。私達は神の国の民であり、地上の国籍もあるから、二つの国に属していて、曖昧になりやすい人たちです。ペテロの手紙を受けている信徒たちの状況も似ています。ディオグネトスの手紙にこう書いてあります。

　自分の生まれた国に住む場合でも、異国人のように生活した。外国も彼らにとっては生まれ故郷であり、生まれ故郷はまた外国だった。この世では旅人であり、国籍は天にあった。法律には従ったが、それぞれの生活は法律を超越したものだった。キリスト者はこの世にあっても、この世のものではないのである。

　このような生き方を周辺の人々は誤解しました。キリスト者は我が国の文化を大事にしない。我が国の文化だけ大事にして欲しいのに、よそのものまで大事にしている。その理由でキリスト者は迫害を受けました。

　権力者たちも誤解しました。キリスト者は我が権力を無視している。キリスト者は無視するつもりはないですが、確か従わない部分が一つあります。権力者にだけ従って欲しいのに、他の王であるイエスにも従っている。その理由で多くの迫害を受けました。キリスト者はもう一人の王であるイエスにも従う。いや、イエスの方にもっと従っているように見える。これは権力者として許せないことだと思い、警戒しました。その人たちにペテロは従いなさいと言っています。


１．主のゆえに権力者に従うキリスト者（１３−１４節）
　ローマの皇帝に従いなさい。皇帝の下にある長官にも従いなさい。あなたがたは神の民だから、神の国だけ大事だから、この地上の国は無視しても良いので、この地上の支配者には従わなくても良いと言っている聖書はどこにもありません。逆に従いなさいと言っています。法律を守り、税金を納め、上に立っている権力者を認めなさいと言っています。

　権力に従う理由は二つです。一つは主のゆえに。信仰の理由です。クリスチャンは上に立っている権力者に従える自由があります。クリスチャンが従うのは国家権力の組織ではありません。国家組織にひたすら従うのは公務員です。キリスト者が従うのは国家組織ではなく、その上に立てられた人に従っています。そして、上の権力をしばらく立てられたのは神です。キリスト者には権力に抵抗する自由もあり、協力する自由もあります。上に立っている権力者は神がしばらく、神の代わりに立てた人です。

　神がしばらく立てたので、「主のゆえに」敬います。上に立っている人が神のみことばに反することをする時は抵抗出来る自由もあります。明確に神のみことばに反することを命じられた時には抵抗しても良い権利があります。神の形によって造られた王様が間違った権力をふるう時は抵抗しても良い権利がすべての人にあります。

　独裁者は抵抗権を絶対認めたくありません。権力者の一言にひたすら従う無知な民が好きです。自分の意志が強い国民は嫌いです。ですから、権力者は無理矢理に権力を振る舞う時がありますが、それは権力が腐敗して、終わりが近づいたことを意味します。

　権力に従いなさいと言っているもう一つ理由は悪を行う者を罰し、善を行う者を賞してくれるからです。誰が悪を行う者で、誰が善を行う者でしょうか？　１２節を参考にしてみると明確です。キリスト者が善を行う者で、信者を誹謗する人が悪を行う人です。国の機関はそれなりに正義を行いまして、善を行うキリスト者を守り、根拠もなくキリスト者を誹謗する人を罰してくれることを期待しています。

　13節の主権者の王、１４節の王から遣わされた長官、１５節のキリスト者を批判する愚かな人々、17節の全ての人、彼らに対するキリスト者の態度は全部同じく彼らを敬い、彼らを尊ぶことです。イエス様が教えて下さった教えである「あなたの敵を愛しない」と通じるものです。


２．すべての人に善を行う自由人（１５−１７節）
　ディオグネトスの手紙によると、衣服、食べ物、その他の生活面でその土地の習慣に従った。国民として全てのことを他人と分かち合った法律には従ったが・・・全ての人を愛したが、全ての人から迫害を受けた。貧しかったが、多くの人々を富ませた。乱暴な扱いを受けたが、他人には完全に振舞った。良い行いをしても、悪者にされて処罰された。

　イエス様によって救われ、解放されたので、何でも自由に出来る自由人です。しかし、その自由を自分の欲望を満たすためにやるのではありません。人のために使います。隣人と競争して勝つために生きているのではなくて、隣人を敬い、彼らを愛し、彼らと一緒に暮らすために生きています。自分が世界一となるために生きているのではなくて、神に栄光を帰すために生きています。罪から自由になりましたが、神のしもべとなりましたので、これからは神と人に仕えるしもべとなりました。これは逆説ですが、この逆説こそ、キリスト教の素晴らしさです。

　迫害する人も神の形によって造られた一人の人間です。神の形を持っている存在なので、敬い、尊びます。損するとか、利益があるとか、損得の計算ではなく、神の形を持っている存在だから、それに相応しく対応するという価値観です。いつかは必ず、人々に認められる生き方です。

　 私達はこの地上に生きている限り、どこかの国に属して、どこかの社会に属して、何かの制度に縛られて生活します。しかし、キリスト者はこれらに属しながら、同時に神の国に属し、イエス様に属し、愛の戒めに縛られて生活します。私たちは神の民であり、イエス様の信じるクリスチャンであることを常に忘れないようにしましょう。



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