2017年4月9日

マタイによる福音書　27章45〜50節

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜ 十字架上の叫び ＞


　「わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか」と叫んでいる御子イエス・キリストに父なる神は何もなさらないことをみて、未信者は「聖書の神は全能の神でもなく、愛の神でもない」と言っています。

　この世界に悲惨な事故、事件があって人々から「愛の神がおられるのであるなら、どうしてひどい事故、事件を止めないのか」と質問されたら私たちはこれらの質問にどのように答えたらいいでしょうか？　私たちも実は大変な時、イエス様と同じく叫びたくなる時があるので、未信者の質問が分からなくもないです。今日の箇所を通して私たちはその答えを考えましょう。


１．お見捨てになる理由を知っておられるイエス様
　信頼していた人から捨てられると極端な憎しみが生じます。親から、会社から、社会から捨てられた人には憎しみがあり、絶えない怒りと復讐心があります。しかし、イエス様にはそのような怒りも、復讐心もどこにもありません。なぜなら、イエス様は十字架にかかる理由を最初から理解しておられたからです。私たちは「わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか」というイエス様の叫びがきっとイエス様の恨みによるものだと思い込んでいます。そこが間違いです。

　イエス様の叫びは見捨てられた恨みから出てきたものではありません。イエス様は十字架の上で、彼を十字架につけた人々への赦しを祈りました。息を引き取られる直前、魂を父の御手に委ねました。復活の後は弟子たちを回復させました。誰に対しても恨みはありません。イエス様の叫びは実は詩編22編の引用です。


２．イエス様の叫びは神様を信頼する詩編22編の引用
　「わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか」は元々詩編22編1節の引用です。
詩編22編は神への信頼があぶれています。22編がもしかして、恨みの詩編であるなら、イエス様がこの箇所を引用するはずがありません。22編が全体的に神様への信頼があふれているので、イエス様もこの詩編を引用したわけです。詩編22編は1節から「わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか」と叫ぶので、まるで、恨みの言葉のように聞こえますが、実はダビデが神様を恨むために叫んでいるのではなく、逆に神様だけが信頼出来るので、このように叫んでいます。ダビデは極端な叫びを通して神様に切実に助けを慕い求め、無限に信頼しています。


３．「わが神」こそ、信頼の言葉
　「どうしてわたしをお見捨てになったのですか」だけだと、確かに恨みの言葉です。しかし、その前に「わが神、わが神」があります。二回もあります。本当に父なる神に見捨てられ、裏切られたと思い、恨むときは絶対「わが神」とは呼びません。「わが神」は信仰の叫びです。そして、いかなる状況でも最後まで従いますという決心です。それではイエス様はなぜ、誤解されやすい22編1節を引用したのでしょうか？


４．心身の苦しみによる自然の叫び
　イエス様の叫びは肉体の苦しみと魂の苦しみがクライマックスになった時、自然に出てきたものです。一番苦しいとき、父なる神様がそばにおられない孤独や寂しさ、恐怖の中で自然に出てくる叫びです。イエス様は代わりに世界の罪を背負っておられたので、父なる神がそばにおられません。イエス様は十字架の上で私たちの代わりに父なる神さまに捨てられる体験をしました。イエス様は私たち人間と同じ感情をもっていたので、私たちが感じる捨てられた気分をイエス様も感じました。ですから、その恐怖が自然な言葉で出てきました。今まで神さまにとても愛された信徒であるなら、このような状況になるとイエス様と同じく叫ぶことになります。今まで神さまだけ愛し、神にとても愛された信徒だけがイエス様のように叫ぶことになります。その代表的な人がヨブです。


５．世の罪を代わりに背負われたイエス様
　イエス様の肩の上に、頭の上に世界の罪が乗せられています。イエス様はこの世の罪を代わりに背負われているので、父なる神としばらく分離されました。しばらく父に見捨てられ、父と分離されることを耐えなければなりません。この苦しみを通して人類の罪を取り除かなければなりません。十字架は御子イエスを選ぶか、人類を選ぶかの単純な選択肢の問題ではありません。どちらを選ぶのが得なのかの経済的な概念でもありません。どちらを選ぶのが正義なのかの倫理的なことでもありません。十字架は愛の神さまだけが出来る御業です。十字架には人間の頭では計り知ることのできない全能の神様がおられます。十字架には人間の心では計り知ることのできない愛の神様がおられます。私たちの制限された能力では、制限された愛では「わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか」を１００％理解することはできません。ただ、信じて受け入れるしかありません。


　これからも、私たちの周辺で起きる災いを見て、私たちは信仰を失うことなく、神さまだけを信頼することが出来るのでしょうか？　災いを見て、私たちは神様に「どうして、こんなに悲惨なことが起きたのでしょうか」と尋ねるかも知りません。その時、神様も私たちにお尋ねになります。「それでも最後まで信じるのか」



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